DTM用PCを自作 その14 O.C.

CPUパワーを節約するために、エフェクト処理に関わる演算を外部DSPにまかせる方法、例えばUniversalAudioのAppolo、ProToolsのHD、WAVESのSoundGridなどもあるが、まずはシンプルに速いPCを求めたい。

なぜならCPU、メモリ、ストレージ、これらが速いと音源の呼び出し、音色の読み込み、トラックの複製、こういったことがスパッと終わる。そうすると作る側の手もそれに合わせてパッパと動くようになり、制作にリズムが出てくるのだ。こういう軽快な操作の中から、いわゆる ”ノッてくる” という状態に入りやすい。プロジェクトのロードはもとより、ピッチシフトやタイムストレッチなど、本来イラッとくる待ち時間を要する処理も ”気持ちイイ” ほど早く結果が出てくる。音楽は心で作るもの。演奏者が楽器を使っている時の気分は何よりも大切だが、音楽制作者がDAWを使っている時の気分も同じように大切だと思う。

5.2GHz常用を試す

O.C.とはオーバークロック、CPUを定格以上のクロック周波数で動作させること。今回、定格3.6GHzのCore i9 9900KをO.Cしてみた結論から言うと、5.2GHz常用は可能ではあるが現実的ではない、という結果。

・CPUのコア電圧を1.4V以上まで上げないと安定しない(明らかにCPUの寿命が縮まる)
・最大負荷時にCPUのみで消費電力が200Wを超える(尋常ではない)
・360mmと280mmのデュアル・ラジエーターでも最大負荷時にCPU温度が80度を超える。

会社から帰って小一時間PCを、、というのならまだしも、1日16時間x365日という使い方で、この電圧や消費電力、そして発熱量はちょっと受け入れられない。一応5.2GHzで回した際のデータを挙げておく。


PCのパフォーマンスを計測するソフト『CHINEBENCH R15』を5回行っても落ちない安定度は得られた。CPUのスコアは2300超えと、8コア/16スレッドを5.2GHzで回すとさすがに速い。CPUのみで15万円以上するマシンと同等のパフォーマンス。


PCの耐久性をテストするソフトのスタンダード『Prime 95』を走らせて5分後の状態。全コア5.2GHz&CPU使用率100%でも温度は60~65度。この後段階的に負荷が増すと75度、80度と上がっていく。

5.0GHz常用に落ち着く

このCPUは定格3.6GHz、ターボブースト時5.0GHzというものだが、ターボブーストでサポートされている5.0GHzでの常用は難なく、CPUのコア電圧も1.25Vであっさりと(あまりにもあっさりと)安定動作する。しかしそこから0.1GHz上げるごとに、安定動作のためには電圧、温度、消費電力と、ネガティブな要素が急激に増す、そういうタイプのCPUなので、5.0GHz常用とするのが最もバランスが良さそう。

このCPUは「速いが伸びしろがない」ので、高クロックにチャレンジして遊ぶタイプの自作派には面白みがなく人気がないのもわかる。アタリ石をOC上級者がチューニングしても常用は5.3~5.4GHzあたりが限界(それもあまり現実的ではない状態で)だろう。


ちなみにクロックを5.0GHzにして、普段使いの常駐ソフトなども全て起動した日常の状態でCHINEBENCHを通した際のCPUスコアは2178。5.2GHzとは6%程度の違いしかなく、この6%のために無理をするのはナンセンスに思える。

・・・ということで、5.0GHz常用に決定!
 
 
 

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