Ozone de マスタリング Part3 注意

さて僕がミックスの済んだプロジェクトのマスターバスにOzone7を挿すと、デフォルトでこのようなモジュールの順番で起動するようにしてあります。 (この連載を書いている最中に変わりました。詳細は最終回で)

・EQ
・ダイナミックEQ
・マルチバンド・コンプ
・マルチバンド・ステレオ・イメージャー
・ポストEQ
・みんなのアイドル、マキシマイザー

この時点で僕が注意していること/みんなに注意して欲しいことを挙げていきます

1.ミックスをフラットに仕上げる

最終ミックスの段階で、「マスタリングするとぉ~、ボーカルやハイハットが前に出てくるしぃ~、リバーブも目立つようになるからぁ~」というように、要らぬ勘繰りをして歪んだバランスでミックスを仕上げないこと。雑念を捨てて、歌も含めとにかくフラット、”どフラット”にミックスを仕上げておくこと。

2.ミックスではダイナミクスを適切に

ミックス完了時に各パート(イントロ、Aメロ、Bメロ、サビなど)のダイナミクスがしっかりついており、かつそれが過度にならないようにミックスを仕上げておくこと。どのパートでもボーカルや主メロのトラックが適切な音量であること。

3.ミックスが終わった当日にマスタリングしない

可能であれば、ミックス完了の翌日以降にマスタリングを行うこと。こうすることで楽曲を客観的に聴くことができ、マスタリングの直前にミックスの”些細で重大な過ち”を見つけられることがよくある。

4.なるべく午前中(昼に起きる人なら午後イチ)に行う

耳の疲れた”夜”にマスタリングしないこと。人が一日”普通に生活”するだけで、耳はかなり疲れた状態になり、小さい音や細かな音の変化は聴き取れなくなります。マスタリングでは、最大でも2.0dB程度までの微細なEQ調整や、1~2dB程度のごくわずかなリダクション量のコンプの調整などがメインとなるため、耳の疲れた夜では、特に初心者は調整前と調整後の違いを”全く聴き取ることができない”(多くの生徒で実証済み)ので、完璧に静かな場所で、スピーカーからドーンと音を出して、午前中に行うのが吉。

5.スピーカーでマスタリングする

モニタースピーカーでしっかりマスタリングしたものは、ヘッドホンで聴いてもちゃんと聴こえますが、逆は真ではないということ。”ヘッドホンミックス”、という言葉が”愚かな行為の代名詞”として使われますが、マスタリングもスピーカーで行うのが基本・・・基本というか他に選択肢はありません。なおかつ、昨今の音楽の聴かれ方を考慮してヘッドホンでもしっかり確認すること。つまりどちらで聴かれても大丈夫なものを作るには、”スピーカーからスタートしないとダメ”、ということです。スピーカーとヘッドホン、それぞれ3種類以上で確認できれば理想的です。

6.ミックスで大きな失敗をしていないこと

ミックスが失敗していると、マスタリングでどうあがいても良いサウンドにはならない。マスタリングで半日こねくり回し、詰んで、そこで初めてミックスの悪さに気づき、「各楽器の音作りからやり直しか(涙)」、最初はこういうことによくなります。特にベースや、キックの胴鳴りによる低域の暴れ、和音楽器やシンセの低音、シンバルなど金モノの音量とピークとなる周波数、ボーカルの音量・音質、トランスシンセや歪ませたギターの高次倍音の扱いなどが地雷なので注意すること。(ちなみに、バランスの良いミックスを行うには、バランスの良いアレンジが必須です)

7.2mixにしてから行っても良い

複数曲をマスタリングする時は当然ですが、たった1曲の時でも、パソコンの負荷が気になるようなプロジェクトやPCスペックの場合は、まず高いサンプリング周波数とビット数で2mixに書き出してから、それをまっさらなプロジェクトに読み込んで作業すると良いでしょう(マスタリングの最中にボーカルトラックのボリュームを0.3dB上げる・・・とかいった”ズル”は出来なくなりますけどね笑)。

【追記】「高いサンプリング周波数とビット数で2mixに書き出してから」について

例えば、44.1kHz/16bitという設定で制作中のプロジェクトがあり、それをマスタリングに向けて2mixに書き出す際、”書き出しのオプション設定”で96kHz/24bitなどと指定して書き出す、という意味。

8.マスタリングの目的を考える

作曲や作詞やアレンジは”クリエイティブな作業”という側面が強いが、マスタリングはそれとは全く違う作業なので”我”を捨てること。「とにかく音を大きくしてライバルに差を・・」や「コレを使えば、なんか音が”良く”なるんですよね?」という人は、”自分が何の為に音楽を作っているのか”をもう一度よく考えて、自分に欠けている”何か”が、明確にわかってからマスタリングすれば、長い精進の末に良い結果に辿り着けると思います。

他には・・・

耳が疲れたと感じたら作業をストップすること

疲れた耳を癒す方法は”寝る”しかありません。(以下加筆)人は精神的な疲れや、耳以外の部分の肉体的な疲れを”聴覚の疲れ”と誤認識する傾向があるので、耳の疲れという感覚を回復するには心と体全体を休ませる必要があります(加筆ここまで)。長時間に渡る連続作業の末に完成させたマスタリングは、破綻の可能性を秘めています。よく寝て、翌日の朝イチ1回目に聴いた時の印象や些細な不安は、まず正しいと思いましょう(そのためには、締め切りに余裕をもってミックスまでの工程を済ませたいものです)。

ルームアコースティックを整えること

ミックスやマスタリングで一番重要なのが耳、2番目が部屋、3番目が機材、です。ルームアコースティックの整っていない部屋でミックスやマスタリングを行うと、作品は”いつも同じようにゆがむ”ことになります。部屋は”何よりも大事”くらいに思って間違いありません(僕も一定期間ごとに調整しています。家具や楽器の置き場所が変化したり、スピーカーも経年変化でバランスが変わるので)。

音楽制作用の機材を使うこと

当然のことながら観賞用の製品はNGです。これはお話しになりません。音楽制作用のモニタースピーカー、モニターヘッドホンを使います。鑑賞用とは製品の目的が違うからです。

・鑑賞用:どのような音楽ソースであっても、魅力的に聴こえるように作られている
・制作用:どんな些細なミスや不具合も、一目瞭然に発見できるよう作られている

目的が真逆です。美容整形をする執刀医が、「”どんな女性でもキレイに見えるメガネ”をかけ、”どんな女性も魅惑的に見える照明”で手術を行ったりしない」、ということです。ガンガンに光を当てて、どこを工事すべきかをハッキリ確認しながら時には拡大鏡を使って手術を行うわけです。そして美人ができあがる。これが制作用の再生装置と、観賞用の再生装置が大きく違う点です。(マスタリングの最終確認では、大きなスピーカー、小さなスピーカー、ノートパソコンの内臓スピーカー、大画面テレビの内臓のスピーカー、カーステレオ、ラジカセ、ヘッドホンステレオなど、あらゆるものでの確認が求められます。)

今日はここまで!
何か得るものがあったら幸いです。

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