【連載】デシベルの話(DTMer向け)#1

スピーカーやヘッドフォンなどの再生装置やDAWの中で、音量は“dB”、デシベルという単位で表されますが、これは理解が難しい単位です。今回はデシベルの基礎をわかりやすく解説します(僕自身も以前、音圧レベル(SPL)と音響パワーレベル(PWL)を混同していたので、自戒の念を込めて書きます)。

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目次

デシベルは相対値

dBは絶対値ではなく、2つの値の比率を示す単位です。つまり、ある値に対して別の値がどれだけ大きいか、という相対的な関係を表すのがデシベルです。

デシベルは電力などに使われる単位ですが、なぜ音の大きさを絶対値(パスカル)ではなく、相対値であるdBで表すのかというと、パスカルで表すと非常に大きな数になってしまうからです。

トンデモない桁数

人が聴き取れる最小の音を1とした場合、木の葉が擦れる音はその10倍、静かな図書館では100倍、普通の会話は1000倍、地下鉄の車内なら10万倍、ジェット機が通ったら100万倍、といった具合です。このように、パスカルで音の大きさを扱うと非常に大きな桁数になります(以下の表を参照)。

そこで使われるのがベルという単位です。ベルは対数を使い、10倍を2ベル、100倍なら4ベル、1000倍なら6ベルと表します。これは、倍率の0の数に2をかけた値であり、つまり10倍ごとに2ベルずつ増えるという対数です。

さらに、これを使いやすくするために、ベルの10分の1の単位であるデシベル(dB)が使われるようになりました。これにより、数値が扱いやすくなり、音量を表す際に非常に便利な単位となります。

音の絶対的な大きさとデシベル

デシベルは相対的な値ですが、人が聴き取れる限界を基準にして、その音量を基準に考えると、同じ音量であれば0dB、10倍なら20dB、100倍なら40dB、100万倍なら120dBとなり、非常に広範囲な音量を2桁、3桁の数字で把握しやすくなります。

防音室のカタログ

もし防音室のカタログが以下のようだったらどうでしょう…

  • 静かにしていると60μPa
  • 大音量で音楽を聴くと200万μPa
  • ドラム演奏では2000万μPa

これでは分かりづらいです。しかし、デシベル表記なら…

  • 静かにしていると10dB
  • 音楽を聴くと80dB
  • ドラム演奏は120dB

デシベル表記なら音の大きさが理解しやすく、計算も簡単です。例えば、減衰40dBの防音室なら、ドラムの音が120dBから80dBに減少します。このように、デシベルを使うことで音量の計算が非常に簡単になります。

いろんなデシベルがある

今回は、音圧レベル(SPL)についてのデシベル表記を解説しましたが、次回はデジタルオーディオにおけるデシベル(dBFS)について解説します。これにより、デシベルがどのように音楽制作に影響を与えるのかを理解できるようになります。

<おまけ>さまざまなデシベル表記

  • dBFS = デジタル信号の大きさを表す単位。
  • dBmW = 電力を表す単位。電波や光ファイバーで使用。
  • dBu = 音響機器の信号電圧を表す単位。
  • dBSPL = 音圧レベルを表す単位。
  • dBV = 音響機器の入出力電圧を表す単位(1ボルト基準)。
  • dBv = 音響機器の入出力電圧を表す単位(0.775ボルト基準、dBuと同じ)。
  • LUFS/LKFS = 放送やストリーミングサービスで使用されるラウドネス値。
  • dB(PWL) = 音響パワーレベル。以前、dBSPLと混同していました。

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