今回は、「音響パワーレベル」と「音圧レベル」の違いについて解説します。どちらも音の大きさを示す数値で、どちらも単位としてdBを使用しますが、これが混同されやすい原因です(実際、僕も以前は混乱していました)。そこで、両者の違いを分かりやすく説明するために、ヒーターと暖かさの関係に例えてみます。
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ヒーターの能力
まず、ヒーターの発熱能力を考えてみましょう。ヒーターが放出する熱の量、これが発熱能力です。この能力は、部屋の広さや気温といった外的要因に左右されません。つまり、ヒーターそのものが持つ純粋なパワーです。カタログに記載されているスペックが、この発熱能力を示しています。
ヒーターの暖かさ
一方で、暖かさについて考えてみましょう。実際にヒーターを使ったとき、どれだけ暖かく感じるかが「暖かさ」です。これは、ヒーターとの距離や位置、部屋の広さや気密性、空気の流れ、床や壁がどれだけ熱を吸収するかなど、さまざまな要素に左右されます。これらの条件が重なり合った結果として感じるのが、暖かさです。
「このヒーター、〇〇ワットって書いてあるけど暖かいのかしら?」
「そんなのは使い方次第だね」(正解)
「(イヤな奴・・・)」(正解)
「なになに、キミはどういう風に使いたいのかな?」(←モテる)
・音響パワーレベルは、音源から空間に放出される音のエネルギーの総量です。
・音圧レベルは、音が鼓膜やマイクに届いたときのエネルギー、つまり音圧の値です。
ご理解いただけましたでしょうか。
音響機器はSPL、家電やPCの静粛性はPWL
音響パワーレベルの場合、「PWL」と明記されていないことがほとんどです。例えば、エアコンや空気清浄機、加湿器、除湿器、扇風機、パソコンの冷却ファンなどは「動作音は20dB」とだけ記載され、単位は付けられていませんが、これは音圧レベルではなく音響パワーレベルです。
一方、スピーカーなどの音響機器では、音圧レベルの場合「SPL」(sound pressure level)という単位が付けられていることが多いです。どちらもdBという単位を使いますが、測定方法や計算式は全く異なります。
ちなみに、音響パワーレベルでは、3dBの増減で音響パワーが2倍や半分になりますが、音圧レベルでは6dBの増減で音圧が2倍や半分になります。全然違いますよね。
次回はいよいよ最終回、パンニングとデシベルの関係についてお話しします。
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