音楽教本の現実―求められるのは確かな情報

各楽器について “正しく” 書かれたアレンジの本(日本語)というのが、世の中になかなか無くてですね、困っています。ヘンリー・マンシーニ、ネルソン・リドル、ドン・セベスキーなどの偉大なアレンジャーが執筆し和訳されている本もありますが、いかんせん昔の本なので前時代的すぎて、ブラスとストリングスくらいしか参考になりません。

音楽の理論書に、赤ペンでたくさんの加筆修正がされているイメージ図。

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どこか出版して~

打ち込みで音楽制作をする現代人に必要なのは、プロドラマーかつ打ち込みもしっかりできる人がドラムのセクションを書き、プロベーシストかつ打ち込みもしっかりできる人がベースのセクションを書き…という具合に、ドラム、ベース、キーボード(ピアノ系)、オルガン系、ギター系、ブラス、ストリングス、鍵盤打楽器、シンセ、クラシックパーカス、ラテンパーカス、和楽器、民族楽器(各地域)、効果音などなど、それぞれの道の専門家が、打ち込み事情を含めて書いた本がこの国には必要です。だれか出して下さい。全6000ページ30万円でも買います。あ、ドラムの章は僕が書きますので500ページくらい下さい。ギャラも印税も要らんです。

『汎用アレンジ』という本

そんなわけで、仕方なく『汎用アレンジ』なんていう本を使ってレッスンしていますが、内容の半分くらいは、無意味だったり間違っていたりして飛ばしたり、僕が大幅に内容を修正したり補足したりして、四苦八苦しながら使っています。

各章を専門家が書かないと無理

そもそもが独りで全てを書こうということ自体がおこがましく、前述の偉大なアレンジャー達ですら「あなたがドラムパータンやフィルインを考えるより、プロドラマーの方が遥かに素晴らしい仕事をしてくれるので、細かく指定するよりドラマーにまかせましょう。以上。」的なことを書いています。これはあらゆる楽器に対して言えることです。もちろんブラスやストリングスの単なるプレイヤーだとアレンジの仕方を知りませんから、プレイヤーとしてもアレンジャーとしてもプロ、という人が本物、ということになります。エリック・ミヤシロさん然り、弦一徹さん然り。

ドラムの章を見れば他の章の察しもつく

例えばドラムの章を見ながらレッスンしていると、ドラムに精通しているわけでもない著者が “こと細かく” 書こうとするから、「ドラマーが見たら腹を抱えて笑ってしまうようなこと」や、「8ビート」や「16ビート」という何ともいかがわしい意味不明な言葉についてのバカバカしい解説や、「こんなこと誰がやるんだよwww」というパターンや奇妙キテレツなフィルインがたくさん出てきます。困ったもんです。。

『コード理論大全』という本

「独りで全部、なんて無理だよなー。いくらページが多くても書いてあることが…」とぼんやり考えていたら、「そういえば『コード理論大全』なんていう仰々しいタイトルの400ページくらいの本を前に買ったことがあったっけ」と思い出し、業者にPDFにさせて目次だけ見て放ってあったので「一度くらい中身を見て見るか」とPDFを開き、まずはテンションについてどう説明しているかを見てみることに。dim7におけるmaj7thや、sus4におけるmaj3rdのテンションについてちゃんと書いてあるかな、、といった気持ちです。

「テンション上がりますねぇ!(ハン・ジュンギ)」じゃない

まずはテンションの導入部分から読み始めると、「~と比較して、これらの音はテンション(Tension)と呼ばれます。これは英語で “緊張”という意味で、文字通りハーモニーに緊張感を与えます。」

あのですね、”テンション” は、”エクステンション (Extension)” の略なんですね。髪につけるエクステと同じ、”拡張” とか “延長” といった意味。ルート、3rd、5th、7th、までに留まらず、さらに上方へ3度堆積を拡張していった音です。「お前、今朝はやけにハイテンションだなぁ」と同じじゃねーっつーの。まぁアマチュアが勘違いしている分には構わないですけど、裏を取らずに思い込みで書籍を執筆する著者だという事実がたった1行で判明した時点で、本全体の信憑性が大いに疑われますね。

というわけで、この1行目を読んで静かにPDFを閉じましたとさ。

誰か~~~~

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