音楽を深く読み解くための9つの分析視点:リズムからミックスまで

音楽は多くの要素が複雑に絡み合って構成されています。プロの作曲家やアレンジャーは、楽曲を分析するときにさまざまな角度から曲を捉え、それぞれの要素がどのように全体に貢献しているかを考察します。今回は、楽曲をより深く理解するための9つの視点をご紹介します。これらの視点を参考にすることで、普段何気なく聴いている音楽の奥深さを味わえるようになるでしょう。

テーブルに並べられたミニチュアの楽器セット。ピアノ、ギター、ドラム、ベースなど、音楽を象徴する小さな楽器が並び、背景には五線譜が浮かぶ。

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目次

リズム(拍子、テンポ、パターン、グルーヴ)


リズムは、楽曲の中で時間軸上に作られる構造物です。現代の楽曲において、リズムは曲の心臓部とも言えます。拍子やテンポはリズムの構成要素であり、パターンはリズムの繰り返しであり、グルーヴはリズムが作りだす独特のうねりのようなものです。

対象楽曲の中からこれらをしっかりと聴き取って分析することが、楽曲の土台を支えるリズムを理解するための第一歩です。リズムは曲全体の流れや感情をコントロールする重要な要素ですので、どのようにリズムが楽曲に影響を与えているのかを感じ取ることが、音楽理解の深さを増す鍵となります。

キー(調、スケール、転調)

楽曲のキーは、その色合いや雰囲気を決定づける重要な要素です。主旋律を演奏する楽器やボーカリストの音域に対してキー設定は非常にシビアです。キーが半音違っただけで歌に勢いが出たりその逆もあります。メジャー/マイナー以外のスケールの選択や、転調が曲に与える感情的な変化も大きな要素です。これらを分析することで、作曲家の意図をより深く理解することができます。

メロディ(モチーフ、音形、音域、クライマックス)

メロディは形で分析します。音という時間の流れの中で刻々と変化してしまうものを、最も確実に捉えるには「形で見る」ということが大切です。楽譜やDAWのピアノロール画面でメロディの形を分析します。どんなモチーフが用いられ、どのように展開されているのか、音域や全体の流れ、クライマックスへの導き方などを分析することで、メロディがどのようにリスナーの感情を揺さぶり、深層心理に触れているのかを見ていきます。

歌詞(テーマ、メッセージ、キーワード、世界観、リズム)

歌詞はリスナーにテーマやメッセージを伝える「器」であり、同時に言葉で音楽にリズムを与える重要なリズム楽器でもあります。メッセージを効果的に伝えるためにはキーワードが大切になりますが、特に現代においてはメッセージ性よりも、キーワードが醸し出す世界観と言葉のリズムが大切な時代です。言葉がどのようにリスナーの心に刺さるよう設計されているかを分析することが大切です。

コード(コードサウンド、コード進行、ハーモニー)

コードは瞬間瞬間の感情や場の雰囲気を司ると同時に、「コード進行」という流れによって感情の抑揚を形成する大切な要素です。またメロディとのマッチングによって、メロディ自体の聴こえ方にも大きく影響を与えます。ただ単に使われているコードやコード進行、コードの機能などを分析するだけでなく、「なぜそのコードを使ったのか」「なぜそのように進行したのか」ということをトータルに捉えていく必要があります。

ジャンル(年代、国や地域、リズム、演奏様式)

楽曲のジャンルというのは、どういった国や地域の、どの年代の音楽か、どういったリズムを持ち、どういった演奏様式(楽器編成や演奏内容)によるものか等によって明確になってきます。現代の音楽は、様々な音楽ジャンルの融合によって成り立っているものがほとんどです。どのようなジャンルのエッセンスが楽曲に含まれているのかを探ることで、曲の背景や独自性をより深く理解する手助けとなります。

楽曲構成

ここ数十年の間、J-POPは「Aメロ、Bメロ、サビ」という「お決まり」の楽曲構成を用いる曲が大半を占めていました。これは多くの日本人が「決まり切った起承転結」や「予定調和」、「ワンパターン」というものに対して嫌悪感を抱かない国民性だからとも言えます。大きな変化を好まない日本人も、さすがに近年ではお決まりの構成を覆すようになってきました。そうした最近の楽曲や海外の楽曲の構成を分析することで、自分自身の曲作りに新たなアイデアを取り入れることができます。

アレンジ(楽器編成、音色、演奏内容、ダイナミクス)

各セクションがどんな楽器編成か、各パートが何をしているかなどを細かく分析していきます。各パートがどんな役割を担っているか、演奏内容はどうか、どの楽器と対になってるか、グルーブは? 音色は? ダイナミクスは? 音域は? ボイシングは? リズムは? どんなジャンルのスタイル? 様々な角度からパートの内容を分析していきます。

アレンジは楽曲そのものです。メロディという二次元的な点と線だけのものを元に、「時間の経過と共に刻々と形を変化させていく複雑な立体構造物を作る」これがアレンジです。プロのアレンジャーがヒット曲の中で何を行っているのかをつぶさに見ることによって、自分のアレンジにも様々なアイディアを活かすことができるでしょう。

ミックス(バランス、パン、サウンド、テクスチャ、空間、SFX)

アレンジが完了した楽曲を、リスナーが心地よく聴けるようなバランス / サウンドにするのがミックスです。各トラックの音に磨きをかけることも大切ですが、全ては全体のサウンドのためにあります。特にビート系の楽曲(ドラムが入っているような楽曲全般のこと)の場合、その中で最も重要なトラックはベースとキックとメインパート(ボーカルやイントロのギター等)です。こういった主要楽器がどういうバランスになっているのかをしっかり聴き取ることが、自分の楽曲の土台をしっかりと支えるための耳を育てます。

まとめ

これら9つの視点を通じて楽曲を包括的に分析することは、音楽というものの本質に触れていく手助けになるでしょう。さらに深く学びたい方は、ぜひ教室で一緒に音楽の世界を掘り下げていきましょう。

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