これ以上低い音域でハーモニーを用いると不快に聴こえるから覚えておいてね♪ というのがローインターバル・リミット(LIL)です。楽曲をアレンジする際に重要です。一般的に下のように示されます。
これを覚えるのか、と思っただけで憂鬱になりますよね。でもコツがあるので大丈夫。
まずは原理を知っておく
2つの音が同時に鳴る時、そこには協和・不協和の度合いというものがあります。2音間の振動比が単純であれば音に「うねり」が生じにくく人には協和して聴こえ、逆に複雑な振動比では音に「うねり」が生じやすく人には不協和に聴こえます。
しかしながら実はそれだけが全てではありません。音域が低ければより不協和に聴こえ、音域が高ければ不協和に聴こえづらい、という側面があります。それは2つの音により生じる音の「うねり」が、低音域ではハッキリと感じられるものの、高音域ではうねりのスピードが速すぎて人の耳には「不快なうねり」として聴こえにくいからです。扇風機の羽が回るのを見ても目が回らないとか、1秒に30コマの動画を見てもカクカクして見えないのと同じです。(ゆっくりだったら羽の回転を見つめると目が回ったり、動画がカクカクして不快に感じることでしょう)
このように、音域が低ければ低いほどうねりが強く感じられて不快度が増しますが、元々の2つの音が持っている協和度も関係してくるため、元々がよく協和するタイプのハーモニーならかなり低めでもセーフ、元々が協和しないタイプのハーモニーならちょっと低くてもアウト、となります。それをまとめたのがLILというわけです。
ちなみに振動比が1:1となるユニゾンや、2:1となるオクターブ関係においてはリミットはありません。2つの音が同時に鳴っても「うねり」がほとんど起こらないからです・・・チューニングがズレてたらアウトですよw(よく「可聴帯域内で倍音が絡み合って濁りが生じ・・・」という説明がありますが、間違ってはいないもののそれだけでは完全な説明になっていません。なぜなら倍音が一切無いサイン波(正弦波)であっても、LILを下回るハーモニーを作れば濁る「うねる」からです)
つまりハーモニーの協和度は物理的な振動比だけで決定するわけではなく、人の耳にとっては音の高さによっても変化するということです。なので音楽を作る際、LILというものを意識する必要が出てきます(音楽を聴いて良し悪しを判断するのは測定器ではなく人間だから)。
最初に7つの音を覚える
まずC3(ミドルC, CubaseやLogicはC3、他メーカーはC4が多い)の下のFを始点として、キーCマイナーのナチュラルマイナースケールで「ファミレシ」と下ります。仮面ライダーV3で覚えて下さい。
はい、覚えました。
そうしたら「ファミレシ」の最初のFと最後のBb、これらの1オクターブ下を加え、ついでに下のFの半音上のF#も加えましょう。
はい、あなたは全部覚えました!
7つの音を2つのグループに分ける
7つの音のうち、高い方の3つの音と、低い方(BbからBbまでの1オクターブ内)の4つの音にグループ分けします。下のようにグループ分けしてみました。細かい部分はまだ「なんのこっちゃ」でOKです。
高い方の音グループ
ここでは2度、3度、6度のLILを覚えます。
実践のアレンジでは、ストリングスやブラスで和音を積んだりピアノアレンジしている最中に、「あ・・・これ結構低いけどLIL踏んじゃってないかな」という具合に、目の前にある2音間の音程がLILを下回っていないかを確認することがメインとなります。下回っていなければセーフ、下回っていればアレンジに修正を加えて再度確認、ということになります。では順番にいきます。
◆2度の確認方法:m2、M2共に、2音のうち高い方の音がF2以上であればセーフ
◆m3, m6の確認方法:m3, m6共に、2音のうち高い方の音がEb2以上であればセーフ
◆M3, M6の確認方法:M3, M6共に、2音のうち高い方の音がD2以上であればセーフ
どれにも共通することとして、2音のうち高い方の音が基準となる音以上かどうかで判断します。
低い方の音グループ
ここでは4度、5度、7度のLILを覚えます。
◆4度と5度の確認方法:P4及びトライトーン(+4, -5)共通で、2音のうち低い方の音がBb1以上であればセーフ。P5のみ、Bb0以上であればセーフ
◆7度の確認方法:m7, M7共に、低い方の音がF1以上であればセーフ。-7のみ低い方の音がF#1以上であればセーフ。
どれにも共通することとして、2音のうち低い方の音が基準となる音以上かどうかで判断します。
まとめ
全てに共通することとして、最初に2音間の音程さえ把握すれば、あとはどちらか一方が基準音以上であるかどうかを確認するだけです。最後に全てを網羅した図を貼っておきます。
おまけ
LILを下回った音程を用いた例外はいくらでもあるが、それらはその音楽がそのサウンドを必要としているような状況で用いられた結果であって(前衛芸術やホラー映画の劇伴など)、特に一般大衆向けのポップスやBGMなどで作り手の無知により”無自覚に”これが犯された場合は、未熟さから生まれた”単なる不快”となるので注意されたし(自覚している場合でも、リスナーを幸福や快感や感動へ導く手助けになっているかどうかよく考えて選択すること。
あなたもこの教室で習ってみたいなら…