Ozone de マスタリング Part17 エキサイター

エキサイターはエレキ・ギター弾きなら馴染みのあるエフェクターではないでしょうか。倍音を強調することによって音にメリハリをつけ、前面に出てくるような効果を生むエフェクターです。


トーカイだって。へー


うはっ、グヤトーン! ヴィンテージ感ハンパない


中学の頃、バンドのギターがこれ使ってました

いや、eBayって何でもありますね。音楽文化の深さの違いを感じるなー


こちらはWAVESのAphex Vintage Aural Exciter。1970年代に登場したボーカル用のExciterの銘機のモデリングです(ハードウェア見た後のこの残念さたるや笑)。

さて今回はそのエキサイターをマスタリングに使うというお話です。

目次

やり過ぎ注意

エキサイターではAphexというメーカーが有名で、ギター用、ボーカル用、ステレオ2mix用など、多くの実機をリリースしています。マニュアルには”やり過ぎ”について注意を促す記載があったり、目盛りに「これ以上使うとヤバいよマーカー」みたいなのがついていたり。どれだけみんなが簡単に”やり過ぎて失敗”するのかが伺えます。注意しましょう。

信号を歪ませて倍音を得る

”倍音を強調”といっても、EQのように”倍音が多く存在する高周波の音量を上げる”というのではなく、”倍音を生成して付け足す”という道具で、信号を”歪ませる”ことで倍音を生成します。

音声信号を歪ませる=倍音が発生。例えばクリーンな「チャラーン、ポロローン」というギターの音をアンプで歪ませれば、「ズジャーン、グゴゴーン」というザリッザリの音になりますね。このザリザリした高周波は、原音を歪ませたことによって新たに発生したものです。

「チャラーン」の高音域をEQで持ち上げても、ザリザリはしてきませんよね? EQで高域を強調したのと、エキサイターで高域を強調したのとでは、原理の違いにより得られるサウンドも違ってきます。エキサイターを上手に使えば、”煌めき”や”輝き”を与えられますし、下手に使えば”紙やすり”や”砂場”のようなサウンドになりますので、注意深さが求められます。

高域を歪ませるとどうなるか

【before】※音量注意

歪のない三角波のオーディオ・トラックにCubaseに付属の”QuadraFuzz”と、”MultiScope”を挿し、変化をEQのスペアナで確認。まずは歪ませる前。オシロスコープ内の波形は綺麗な三角波、スペアナの表示は素直な右肩下がりになってます。

【after】

QuadraFuzzで高域のみ歪ませます。オシロスコープの波形に歪がみられ、スペアナでは高域が持ち上がっているのがわかります。サウンドも高い倍音がグッと目立ってますね。

Ozone7のExciter使い方

2mixにエキサイターを使う場合、ほとんどが一番上のバンドだけを使うことになるでしょう。

①バンド幅を設定
 ここはオートよりマニュアル調整が良いでしょう
 ソロにしてターゲットとなる音域を確認しながら行うと良いでしょう

②”Amount”を上げる
 まずは音の変化が感じられるところまでフェーダーを上げる

③歪の種類を選択
 6種類あり、それぞれに個性があるので最適と感じるものを選ぶ
 (種類によりかかり具合がかなり異なるのでAmountを調整しつつ比較)

 6種類の詳細はマニュアルに記載されてます。簡単に説明すると

  Warm:中音域を濁らせずに、真空管タイプの歪みをハードにかけられる
  Retro:トランジスタ的なヘヴィーな歪み
  Tape:テープ独特の、アタックが強調された明るくてシャープな歪み
  Tube:真空管ならではの厚みのある豊かな中音域が特徴の歪み
  Triode:三極真空管の暖かく繊細な歪み
  Dual Triode:デュアル三極真空管のよりハードな歪み

④”Post Filter”(ハイシェルフ)を含め、全てのパラメータを微調整

Tips

とにかく大切なことは”バイパスによるエキサイター処理前後の比較”です。これを怠ったら必ず失敗すると思いましょう(怠っていなくても失敗するくらいですから)。

”Oversampling”は、「ディストーションのサンプル・レートを上げて、アナログ・モデリングの精度と音質を大幅に向上させる機能」ということですがCPUパワーをかなり使うので、マシン・パワーに余裕があったら試してみて下さい。

扱う2mixの年代(古い音源のリマスタリング等)や、音楽のジャンルによっては、全てのバンドにエキサイターを適用することで、温かみや厚みが増して良い結果になる場合があります。その場合、”Mix”のフェーダーを下げて原音も混ぜることで、低音域に音の芯やパンチを残すことができます。

また、M/S処理もできるので、センターのボーカルだけをシャッキリとさせたり、サイドの楽器の高域だけを強調したり、中央のキックやベースの存在感を増したりなどもできます。もちろん何をするにも”やり過ぎ注意”ですが、ぜひ積極的に色々試してみましょう。自分にとって貴重な”気づき”があるかも知れません。

各モジュールについてはここまで!
次回は、レンダリング時に重要になるディザについて説きます

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