Ozone de マスタリング Part16 ステレオ・イメージャー

今回はオプション的なモジュールについて書きたいと思います。

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マルチバンド・ステレオ・イメージャー

以前はマスタリングの段階でのステレオ・イメージの操作はあまり行われませんでしたが、MS処理が一般化してからは積極的に行われるようになってきました。皆さんもステレオ・イメージを調整する道具として、WAVESの”S1 Imager Stereo”や、”Center”、Cubase付属なら”Stereo Enhancer”、あたりはご存じかも知れませんね。

WAVES CENTER
BRAINWORX BX_Control ナツカシス・・

ひと昔前だと、BRAINWORXの”BX_Control”や、WAVESの”S1 MS Matrix”を駆使してのMS処理が一般的でした。MSエンコードした信号をオーディオ・トラックにパラで書き出し、Mid成分とSide成分、それぞれにEQやコンプ、レベル補正などを行って、パンでLとRに振ってデコードする、こんな面倒なことをしていました(あー、書くのも面倒)。

これが今やワンタッチ&マルチバンド化。すごいですね。

使い方

広げたいバンドのフェーダーを上げる

以上。

最初はみんな大抵かけ過ぎますね。あまりに簡単なので嬉しくなってバカみたいに広げてしまうわけです。僕もやりました笑 ”最も簡単に使用過多に陥り易いモジュール”とマニュアルに書かれています。気を付けましょう。EQの場合と同じで、あるバンドを調整する時、最も影響を受けるパートに注意を注ぐのは当然として、”その他のパートや全体のサウンドにどう影響が及んでいるか”、が大切ですが、これを聴き逃して失敗に至るケースが多いようです。頻繁にバイパスして元のサウンドとよく聴き比べましょう。

フェーダーは中央の0.0でバイパスの状態、上げると広がって上端で最大幅、下げると狭まって下端でモノラルです。右下の”Polar Sample Vectroscope”内の細かい点の横方向への広がりが、左右への広がりを表示しています。特定のバンドをソロにすることで、その帯域がどれくらい左右へ広がっているかが目視できるので、バンド毎の調整の際に役立ちます。信号がモノラルの場合、完全に縦に一本の細い線になります。

メリットとデメリット

【デメリット】

・最も重要な中央のパートの存在感が削がれる
・自然な空間の広がりが無くなる
・定位がぼやけて楽器の位置をイメージしにくくなる
・各パートが輪郭を失ってぼんやりした感じになる
・リバーヴ感が増して不必要な音が増えたように感じる
・奥行きが無くなる

こういったことが起きていないかよく注意を払って度を超えずに使用すれば、素晴らしい道具だと思います。

【メリット】

・音像が左右に広がる

いつものことですが、メリットはサルでもわかるレベル、しかしデメリットはよく聴かないとわかりませんので、バイパスをオン・オフして(モジュール単体のバイパスは、それぞれの電源ボタンでオン・オフ)悪影響が出ていないか慎重にチェックすると良いと思います。

マルチバンド・イメージャーを扱うコツ

一般的には、低い帯域よりも高い帯域を広げることで良い結果に繋がり易いと思います。また低い帯域は中央に寄せると良いとよく言われています。しかしこれも程度の問題が重要で、例えばセンターからパンで少し横に振ったアコースティック・ギターがあったとして、そのアコギのシャリシャリとした高次倍音は端から聴こえるのに、低音弦の音は中央寄りから聴こえてくる・・・、おかしいですよね? ギターの位置が”ココ”と特定できなくなります。ですので、どちらにしても控えめな使用をオススメします。

またヘッドホンは、聴き手に”誤ったステレオ・イメージ”を与えるので、このモジュールの調整は必ずスピーカーで行うこと。スピーカーを使っての調整が”必須”です。

その他の機能

ステレオ・イメージャーに限らず、マルチバンド系の全てのモジュールは、再生中にグラフの右下にカーソルを合わせると表示される”Learn”をクリックすることで、サウンドを分析して各バンドのクロスオーバーが自動調整されます(6~7秒要します)。クロスオーバーはマニュアルで調整することも可能です。バンドをソロにして、その帯域に含まれるパートを確認しながら調整すると良いでしょう。

またLRの信号の相関性を見るメーターやグラフ、位相差を見るグラフ、オシロスコープなど実にさまざまなメーターやグラフ類を装備していますが、実際に役立つものが、前述の”Polar Sample Vectroscope”の他にもうひとつだけあります。

Stereo Width Spectrum

このメーターでは左右へのサウンドの広がりを、スペクトラム・アナライザ風に見ることができます。グラフ内の上下への広がりは音量には関係がなく、左右への広がりの度合いを表しているので、信号が完全なモノラルの状態だと、横1本の線になります。どの帯域がどれくらい広がっているかといったサウンド全体の確認と同時に、特定のバンドをソロにして確認・調整することで、操作の結果がどのあたりの帯域まで影響するのかを目視できます。これは広がりの調整だけでなく、バンド幅のマニュアル調整の際にも役立ちます。

Stereoizer

これはモノラル信号を左右に広げる際に使用する機能です。モノラル信号及び”ステレオ信号の中で完全にセンターにある信号”は、MS処理では左右には一切広がりませんので、何か”特別な理由”でセンターにあるパートの音像を広げたい時には役立つでしょう(一般的なステレオ2mixのマスタリング作業では必要なさそうです)。

これはどちらかと言うと、ミックス作業において、モノラルのトラックの音像をふっくらさせたり、アグレッシブなHip-Hopでシンセベースやキックの低域を広げたり、ジャキジャキのトランスでシンセの高域を広げたり、といった使い方ができると思います。Cubase付属の”Mono to Stereo”のマルチバンド版と考えるとわかり易いかと思います。

この”疑似ステレオ”機能は、LとRの信号に対して周波数や位相で左右差を与えて広がりを得るので(憶測)、簡単に”奇妙なサウンド”になるため注意が必要です。横方向のスライダーで”かかり方の質”を変えられるので、ここで”奇妙なサウンドにならないポイント”を探すと良いと思います(マニュアルには”分量”と書かれていますが、広がりの”量”を調整するスライダーではありません)。

今回はこんなところかな・・・
簡単に終わると思ってたけど、なんだかんだけっこう面倒だったなコレ

次はエキサイター!!!

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