Ozone de マスタリング Part14 EQ おまけ

今回はマスタリング時のEQ処理において、”僕が”普遍的と思っている事柄だけ挙げてみます。

まず、コンプレッサーの前と後ろにEQを配置します。コンプ前のEQは問題のある帯域のカットに使い、コンプ後のEQはローとハイのブーストに使います。まずは、コンプ前のEQで不必要だと感じる帯域を抑える作業から始めましょう。

目次

コンプ前のEQ

おいしいポイント

中低域に濁りを感じる場合、100Hz~300Hzの間のどこかをカット
中域にクセを感じる場合、250Hz~1kHzの間のどこかをカット
聴き疲れする音に感じる場合、2kHz~4kHzのどこかをカット

ゲインを調整する際、絶対に数値やグラフを見ないこと。

下を向くと外耳も下を向いてしまうので、スピーカーの方を向いたまま目を閉じると良いでしょう(視覚情報が遮断されることで視覚以外の感覚が鋭敏になります)。調整する周波数を定めたら(探し方は後述します)、ゲインの数値表示にカーソルを合わせ、マウスのドラッグで上げ下げして「ココ!」というポイントを探ってゲインを決めます。

例えばもしその結果が-0.3dBだった場合、その数値だけを見た友達は「0.3dBの違いがわかるなんてこいつスゴイ!」と思うかも知れませんが、そうではないことは本人が一番よくわかっていますよね。「最善だ」と感じたポイントで手を止めたというだけで、「0.3dB下げた」わけではない、つまり数値そのものに何の意味もないということです。

もしボーカルなどメインとなるパートが、埋没しているような場合はEQで前面に出るように処理しましょう。原因となる帯域を抑えることでボーカルが前面に出てくるので、そのポイントを探して最適な量の処理をしましょう。

他に、複数の楽器の基音や倍音が集まり、他より出過ぎて聴こえる帯域があるかどうかも探します。あれば適量抑えましょう。

問題となる帯域の探し方(Ozone7)

一般的なEQで”問題となる帯域”を探す時、ピークを作り横方向へスウィープさせて探すことになりますが、Ozone7のEQは、Altキー(MacならOptionキー)を押しながらマウスでEQエリアをクリック&ドラッグすると、カーソルのある帯域を中心にバンドパス・フィルターがかかりますので、この便利な機能が、一般的な探し方よりはるかに”容易に”、そして”的確に”、問題個所を浮き彫りにしてくれます。

不要な超低域を抑える

もし音楽的でない超低域(30Hz以下など)が鳴っていれば(たいていは、キックやベースがその要因になります。ボーカルなどのそういう部分はすでにミックスで削ってあると思いますので)、そこをシェルフタイプのEQで抑えておく。しかしながら、ドラムやベースのいない小ぢんまりとした楽器編成なら、その必要は無いことが多いですし(といってもカホンなどが入っていれば、またわかりませんが)、オケものだと逆にこのあたりは空気感につながるので、むしろ”欲しいところ”です。つまりよく聴いて”必要ない”と感じた場合のみ、抑えると良好な結果に繋がります(ハイパス・フィルターでバッサリいっちゃう人もいますが、ちょっと乱暴かも)。

コンプ後のEQ

コンプやマキシマイザーの影響、または等ラウドネス曲線を考慮して、コンプ後のEQでローとハイをシェルフで持ち上げましょう。

おいしいポイント

ハイは5kHzから8kHzの間を起点にブースト
ローは45Hzから60Hzの間を起点にブースト

EQのタイプはデジタルを選択。ローシェルフ、ハイシェルフそれぞれ選択したら、カーブのタイプは4種類の中から、理想的なサウンドだと感じるもの、もしくはリファレンス楽曲に近くなるものを選びましょう。ゲインの調整は、やはり数値やグラフを見ずに行って下さい。頼りは自分の耳のみです。これが真実。

他に

ある帯域を調整する際、まずはその帯域を調整することで”最も大きな影響を受けるパート”に注目しながら調整しましょう。同時に他のパートにどのような影響が及ぶのかもよく聴いて下さい。

コンプ前後のEQを行ったり来たりしながら調整。

あまりに大きな増減(5dBなど)が必要な場合、2mixが破綻しているので、その場合はミックス作業に戻って各トラックのトリートメントやフェーダーの位置を再調整しましょう。

必要最小限のバンド数で仕上げられるよう心掛けましょう。

どんな時も、どこかの帯域を調整したらバイパスして前後をよく聴き比べ、良い結果に繋がっているか、やり過ぎていないか、頻繁に比較して確かめましょう(上手な人やプロがみんなやっていることです)。

ほぼ完成したら、なるべくたくさんの再生装置、たくさんのヘッドホンでチェックしましょう。

ミニマムなノートパソコンのスピーカーで聴いても、キックのフレーズやベースのラインが認識できるかをチェックしましょう。

様々な音量でチェック

ローやハイが”上げ過ぎ”になっていないか、大音量でチェックしましょう。僕の場合、すぐ隣にいる人が何か喋っても聞えない、いわゆる”爆音”でチェックしますが(85dBA前後)、これをやっておくと、クラブやライブ会場のPAで再生されても大丈夫なものになります。やらないと大音量時に”ハイハットが耳に突き刺さってくる”、”キックが全てのパートを圧倒してしまう”というようなことが起きるので、このチェックは重要ですが、このチェックの後は耳が「キーン・・・」という感じなので、作業の最後の工程でやるようにしています。

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これは僕が使っている音量測定器。テストトーンを鳴らして周波数ごとの音量をチェックしたり、色々役立ってます。家で爆音チェックができない人は、カーステレオでの爆音チェックが有効。もしも低音で失敗していると、再生音があからさまに”とんでもないこと”になるので、非常にわかりやすいです(周囲の迷惑にならない場所でやってね)。

もちろん小さな小さなボリュームでも聴いてチェックしましょう。メインボーカルとリズム楽器と、それ以外の本当に重要な楽器が少しだけ聴こえればOK

以上

 
次はコンプだな

これだけ教えたんだから、今度数字をマネてきたら、その数字について10分間プレゼンさせるぞ!

覚悟してマネて来いよ!!

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