今回は、”Mono”と”Swap”について解説します。
Monoでバランスを確認
ステレオ2チャンネルのミックスでは、楽器をパンで左右に振ったり、ディレイ成分を左右に振ったり、ゴージャスに広がるリバーブを使ったりと、横方向への広がりはサウンドの魅力のひとつでもあります。
しかしボーカル、キック、ベース、スネアなど、本当に大切なパート、楽曲の柱となるパートは全てセンターにあります。より派手でワイドなサウンドを求めてミックスやマスタリングを行うと、肝心のセンターのパートへの意識が薄くなったり、全体のバランスを取り損ねがちになります。
そのような場合、Monoモードで広がりを一切無くし、全ての音をセンターに集めて聴くことによって、”本当の”音量バランスが非常に掴みやすくなります。左右へ広がった音に注意をそがれてバランスを欠いた結果を招かないために、マスタリングの最中にはしばしばMonoモードを使ってバランスを確認しましょう。特にヘッドホンでのモニターは、横方向の広がりをより強く感じることになるので、Monoモードでのバランスの確認が必須となります。
Swapを使って左右を入れかえる
ミックスやマスタリングにおいて、部屋は何よりも大切です。
・音響特性をしっかり整えた部屋に安物のモニタースピーカー
・何も対策を施していない部屋に最高級のモニター・スピーカー
この場合、前者の方が良いサウンドが作れます。部屋の形や壁の材質、家具の影響による周波数特性の乱れ、帯域ごとの残響時間の乱れ、左右の位相の乱れ、定在波など、理想的な音響特性の妨げになる要素はたくさんあり、対策が一切施されていない部屋の音響特性の乱れやゆがみは想像をはるかに超えたものとなっています。
しかしながら一般家庭においてマスタリング・スタジオのような理想的な再生環境を得ることはほぼ不可能です。部屋に対してスピーカーの位置が偏っていたり、壁までの距離や家具の配置が左右で非対称だったりということがほとんどだと思います。
その場合、右スピーカーの音と左スピーカーの音は、かなり違って聴こえていると言えますが、これはスピーカーだけに留まらずヘッドホンにも当てはまります。人の聴覚は左耳と右耳では感度が少なからず違っています。帯域ごとに測定すると何dBもの違いが出るのは珍しくないことです。
ヘッドホンでは、スピーカーとは違って、Lチャンネルの音は左耳のみ、Rチャンネルの音は右耳のみで聴くことになるので、左右の耳の感度の違いが顕著に出ます。外耳の形、内耳の形、鼓膜の状態、耳小骨の状態、聴覚神経など、様々な要因で左右差が生じます。
「部屋を整えるのは大変だから上質なヘッドホンを用意した。これで正しく音が聴こえる」と思ったら大間違い。”Swap”を使って左右を入れ換えて確認してみて下さい。「アレ!?シンバルってこんなにデカかったっけ?」ということが普通に起きます。
何種類ものスピーカーやヘッドホンでの確認と同様に、しばしば左右を入れ換えて確認するのも、最善の結果を得るために不可欠な行為です。
今日はここまで!