今回はマキシマイザーのスレッショルドとメーターの話です。
メリットとデメリット
マキシマイザーはコンプと違って、スレッショルドを下げるだけで自動的に音が大きくなっていきます。しかし闇雲にスレッショルドを下げれば良いというわけではない、そのことはもう皆さんも十分承知かと思います。マキシマイズが過剰になると、
・音が歪む、濁る、割れる
・ダイナミクスが無くなる
・空間の広がりや奥行きがなくなる
・ドラムのパンチやキレが無くなる
・ポンピングが起こる
など多くのデメリットが表れてきます。マキシマイズが最適ならば、
・音の密度が増して迫力のあるサウンドが得られる
・音が大きくなって聴き映えする
というメリットが得られます。よって、前述のようなデメリットを表面化させずに、これらのメリットが得られるスレッショルド値が見つかれば、それが最善ということになります。
デメリットは認識し難い
しかしながら、
”濁る”、”奥行きがなくなる”、”パンチがなくなる”
→デメリットは初心者にわかりづらい
”迫力がある”、”大きくなった”
→メリットはサルでもわかる
つまり耳が未熟であればあるほど”デメリットに鈍感”であるため、いとも簡単に”やり過ぎ”になります。例えば初心者だと10人中10人ともやり過ぎますし、もし自分の曲だと(大抵そうなわけですが)「俺の曲を迫力満点にしたい。ライバルよりも大きな音にしたい」という心理も働いて、面白いくらいやり過ぎる人も少なくありません。
2種類のメーターの機能の違い
そこで「耳が未熟かつ主観を捨てられない場合、どうやって最善のスレッショルド値を探したら良いのでしょう?」ということになるわけですが、ここでRMSメーターというものに頼ることになります。耳がダメなら目です。
【ピークレベルメーター】
一瞬の最大値を逃さず正確に表すメーター
【RMS (Root Mean Square = 二乗平均平方根) メーター】
一定時間内の平均値を表すメーター
難しいことはさておいて、2つのメーターの違いは上記の認識でOKです。
背が大きく見えるチームはどちらか
例【18人の野球チームAとBがあったとします。】
Aチームの身長:たったひとりが192センチ、残り全員160センチ
Bチームの身長:18人全員が190センチ
あなたがこの2チームを見たとき、どちらのチームが「背が大きい」と感じるでしょうか。この2チームが向き合って「よろしくお願いします!」と挨拶しているところを想像したら容易にわかるでしょう。
一瞬のピークを”全体に音が大きい”とは感じない
音も同じです。たとえ一瞬の大きな音があっても全体が小さければ「音が小さい」と感じますし、最大値がどうであれ平均的に大きければ「音が大きい」と感じます。よってRMSメーターは、ピークレベルメーターよりも、”聴感上の音量”に近い値を示すメーターだと言えます。
Ozone7ではメーターに表示されるレベルには濃淡があり、暗い部分がピーク値を表しており、明るい部分がRMS値をあらわしています(上部の数値においては、上段の赤い数値が最大ピーク値、下段の白い数値が最大RMS値です)
Cubase9では、MixConsoleで右エリアを表示させ”メーター”タブの”マスター”タブを選択してメーターを表示させます。こちらもOzoneと同様、ピーク値とRMS値がひとつのメーターに同時に表示されます。メーターの下には、それぞれの最大値が表示されます。
今日はここまで!
次回はIRCについて、そして「どんなジャンルの楽曲は、どれくらいのRMS値にマキシマイズしたらベターか」という話になります。