音楽の聴き方ガイド:作曲家・アレンジャーとしてのアプローチ

音楽を作る側になったら、作品のクオリティをさらに向上させるためにも、音楽の聴き方にこだわりたい。音楽を血となり肉となるように深く理解することが、クリエイティブなプロセスにどれだけ役立つかを探求しましょう。

ミニチュアのヴィンテージレコードプレイヤーに、小さなシルエットの人物がレコードを置こうとしている様子。背景には楽譜や音符が浮かび、音楽と人とのつながりをミニチュアの世界で表現している温かいイメージ。

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古典的なジャンルから学ぶ

古典的なジャンルの楽曲には、そのジャンル固有の典型的な表現が網羅されています。現代的な楽曲であっても、結局は1980年代以前の音楽の再解釈や融合で成り立っていることが多いので、その元となるジャンルに精通していることが、音楽制作者としての力になります。とはいえ、自分の興味を引く曲、感覚に訴える曲を探して聴くことが重要です。「誰かが勉強になると言った曲だから、つまらなくても聴く」―こんなことをしても血肉にはならないので、多くは時間の無駄になってしまいます。自分がピンとくるものだけを選んで、その魅力を探求することが大切です。

時代を10年単位で考える

20世紀以降の音楽を時代で考える場合、10年単位で捉えていくとよいでしょう。例えばイギリスのロックなら、1960年代がロックの発祥、70年代がハードロックとプログレッシブロック、80年代が第二次ブリティッシュ・インヴェンション、90年代がブリットポップ、2000年代がインディーロックの時代です。

アメリカのポップなら、1950年代がロックン・ロールやロカビリー、60年代がモータウンやサーフミュージック、70年代がディスコとソフトロック、80年代がMTVと産業ロック、ポップアイドルの時代です。このように10年単位で区切っていくと音楽の特徴や時代の流れを把握しやすくなります。

ミニチュア風の黒板に、4行に分かれて次のテキストが書かれている。1930s Swing Jazz、1940s Modern Jazz、1950s Hard bop Jazz、1960s Mode Jazz。それぞれの行が10年ごとのジャズスタイルを示しており、黒板の横には小さなチョークが置かれていて、教室の雰囲気を感じさせるミニチュア風のシーンとなっている。

国や地域を意識して聴く

音楽はそのジャンルが育まれた国や地域によって個性的なものになります。1年中どんよりとした空のロンドンのロックと、晴天率が高く年間通してカラッとした気候のロサンゼルスのロックでは、まるで別のジャンルかのように印象が違ってきます。キューバのラテンのような底抜けに明るく快活な音楽は、マイナス40度にもなるシベリアでは生まれていません。現代の日本のように狭くゴチャゴチャとした生活環境から、日本ならではの特徴的な音楽が生まれてくるのです。音楽を聴く時、必ず国や地域とセットで捉えましょう。

作曲家や編曲家を調べる

いいな!と思う曲に出会えたら、必ず作曲家(もしくはアーティスト)を調べましょう。あなたがいわゆる「聴き専」なら、ミュージック・プレイヤーの”おすすめ”に出てきた曲をただ聴いていればいいでしょう。しかし作る側に回りしっかりと人の心を掴みたいなら、自分の心を掴んだ作曲家を調べ、その作品を掘り下げましょう。もし可能であれば編曲家についても調べてみましょう。そうすることで、自分が好む曲の編曲パターンを理解することができるかもしれません。

音楽ジャンルを把握する

自分が今聴いている曲がどんなジャンルに属するのかを把握しましょう。「アニソン」や「映画音楽」などは、純粋なジャンル名ではありません。アニメに使われていればどんなジャンルの楽曲でもアニソン、映画に使われていれば映画音楽、ゲームならゲーム音楽に分類されますが、ジャンル本来の意味は「何に使われているか」とは異なります。音楽ジャンルは時代や地域、演奏様式によって分類されるものです。今聴いている楽曲がどの音楽ジャンルに属しているかを把握することで、あなたの音楽的な幅が広がり、より豊かな制作ができるようになります。

まとめ

こういった音楽の聴き方をしていくと、大衆音楽の全体像がつかめるだけでなく、自分が好きな音楽や作りたい音楽が、どんな時代、どんな地域、どんなジャンルの影響を受けたものなのか、好きなアーティストの楽曲にどのような要素が含まれているかが、しっかりと理解できるようになります。こうして音楽の背景を深く知ることが、あなた自身の音楽制作に新たなインスピレーションをもたらすでしょう。

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